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2014年2月

2014年2月15日 (土)

玉ちゃんの独り言 第27回「靖国参拝 VS 安重根記念館」

         玉ちゃんの独り言 第27回「靖国参拝 VS 安重根記念館」

 「安重根」という名前を元から知っていた人は、日本人全体の何%くらいいるだろうか? 入試にもクイズ番組にも出ないこの人物が、我が国の初代内閣総理大臣を暗殺したと知っている国民はいったい何人いるのだろう? ちなみに韓国で同じ質問をすれば、ほぼ100%正答であるに違いない。逆に言えば、日本人の何割かが答えられないであろう日本の最初の首相名を、韓国人は必ず答えられるのである。さまざまな問題の背景に、この歴史教育の差が関係してきているように思われる。それは単に対中・対韓外交だけに限られるわけではない。  安重根の記念館が中国のハルビン市に出来たことをマスコミは一斉に報道し、日本政府は当然のように不快の念を示し中国に抗議した。「死刑判決を受けたテロリスト」を讃える記念館を開設した中国と、彼を「義士」と称える韓国に対して、理解できない類の発言を何人かの政府要人もしているが、中韓両国にしてみれば、死刑判決を受けた犯罪人とはまさに靖国神社に祀られているA級戦犯に他ならない。つまり日本政府の安重根記念館開設批判も中韓の首相靖国参拝批判も、心情的には分からなくもない一面を持つものの、五十歩百歩の内政干渉合戦と欧米諸国に言われても仕方がない気がする。ただ問題は、一般の日本人が安重根記念館のことをすぐに忘れるのに対して、中韓両国民は靖国のことを今までもこれから先も決して忘れることはないということにある。  安倍首相の靖国神社公式参拝は非常に大きなニュースとして取り上げられた。今まであまり批判してこなかった台湾やアメリカまでもが、厳しい論調でコメントを出している。だが小生は、当初この問題に関して「独り言」を書くつもりはなかった。それは、小生が靖国神社に行ったことが無いからである。たとえ靖国神社のことを多少調べたとしても、現実に出向き遊就館の展示を見ない限り、「靖国」を語るべきではないと思っていた。しかし今回の安重根記念館開設に対する官房長官の政府見解を聞いて、ちょっと書いてみたいという気持ちが湧き上がってきたのだった。  靖国神社が問題とされる点は幾つかあるだろうが、先ず、天皇のために戦って亡くなった人々を祀るという理念の下に創設されたはずなのに、朝廷から追討命令が下った時の長州藩の切腹した家老や久坂玄瑞、武市半平太のような当時のテロリストのリーダーのような人物(もちろん倒幕に多大な影響を与えた幕末志士ではある)が祀られ、幕府軍はもちろん維新最大の功労者であった西郷隆盛さえ祀られていないということ。まさに天皇と日本のため奮闘した乃木希典や東郷平八郎もやはり入ってはいない。逆に戦死していない非戦闘員の民間人も多数祀られているというのに。これは靖国神社の前身である東京招魂社が国家全体のものではなく、明治政府の軍隊が管理するものであったからであろう。したがって祀られているのは戊辰戦争以降の薩長中心政府に都合の良い人々だけに過ぎない。つまり、靖国神社とは一般の神社のように元々日本古来の神々を祀っているわけでもなければ、国のため天皇のために犠牲になった人間を祀る目的で建立されたわけでもないのだ。一般の神社と同格の存在となった後も、明治時代から第二次世界大戦敗戦まで一貫して軍司令部が国民を戦地に駆り立てるための方便の場であったのだ。「英霊となって靖国に」という謳い文句は、好戦派の政治家と軍部が天皇陛下の御名を借りたに他ならない。そこに祀られる人物の選定は昔も今も独断的な選考基準なので、自分が祀られたくないと思っていてもそれを拒否することすら出来ないのだ。したがってそこに祀られている朝鮮民族や中華民族(当時は共に一応日本人)の遺族が分祀削除を長年求めているにも関わらず、実現することは永久にない。同様にA級戦犯の合祀も当時の宮司の一存で決まり、神社の性格上分祀されることは将来的にも決してありえないことなのだ。従って今後天皇家が参拝することも同様にないと言ってよいだろう。もう一度戦争になれば、話は違ってくるかもしれないが・・・ だがそれより小生が問題に思うのは、遊就館のことである。この館の展示内容が極めて強い色調で戦前の日本軍を賛美するものであることは有名だが、同時に興味深いのが戦前戦中に亘って「鬼畜米英」とされていたはずのアメリカに対しての憎悪的表現がいつの間にか無くなっていたらしいという事実なのだ(注、100%ではないかもしれません。念のため)。日本が戦って最も被害を与えられた相手国はアメリカであるにも関わらず、中韓はそのままで、反米的表現のみを削除するというのは極めて都合の良い政治判断と言わざるを得ない。政治判断と云えば、靖国参拝をする多くの自民党政治家の何割かは、自民党の巨大かつ強大な支持組織である日本遺族会の意向を受けてのものであることは公然の秘密である。そのもっとも顕著な例が、小泉元首相であろう。彼は首相在任期間以外は、その前後参拝していないはずなので、靖国神社そのものに思い入れがあるとは到底考えられない。対照的なのが、安倍現首相だ。彼は靖国そのものが好きらしい。たぶん、その大きな理由は、靖国神社の理念である戦前日本の美化とA級戦犯合祀ではないか。彼の大好きなおじいちゃんをA級戦犯にした東京裁判は、心情的に許せない認められないものなのであろう。確かに、東京裁判には問題点が多く、当時のインドの判事が全員無罪と述べたのは有名な話である。だが、戦後日本は東京裁判の結果を受け入れることを条件にサンフランシスコ講和条約で独立を勝ち取った以上、国の政治の代表者たる総理大臣が東京裁判の結果に文句をつけてはならないのだ。ましてや「靖国は日本のアーリントン(国立戦没者墓地)だから、参拝して何が悪いのか」などという詭弁は述べてはいけない。言うまでもなく日本でアーリントンに当たるのは「千鳥ヶ淵(戦没者墓苑)」しか存在しない。無宗教故、天皇を始め、アメリカの国務・国防両長官も献花しに行っている。もちろん歴代首相も8月15日に必ず。これで解ることは、靖国参拝に拘る政治家は、靖国でなければならないのだ。誰が祀られ誰が祀られてなかろうが、A級戦犯合祀と遊就館の存在が最も必要条件なのだ。そして政府自民党には、靖国に変わる国立追悼施設を造る気は今のところなさそうである。とすれば、中韓両国の批判もあながち見当はずれとは言えまい。  今から十数年前、若者の主張の番組にゲストとして招かれた自民党大物政治家が、面白い発言をしていた。「何故、日本の学校は現代史を詳しく教えないのか?」という疑問に対して、元文部大臣であった彼は、「(社会共産系である)日教組が多い教師たちに現代史など教えてもらっては困る」というのが政府文部省の方針だと本音を語ったのである。当時の小生も漠然と感じていたことだが、こんなストレートに内実を述べてくれたことには、正直驚いた。だが、これほどの問題発言にもかかわらず、マスコミはほとんど報道することもなかった。ただ失言癖のある彼は、その後派閥の長になったにもかかわらず、自民党総裁選への出馬機会を弟分たる安倍氏に奪われてしまった。  今回の「独り言」を書くにあたって、このテーマに関する日韓の若者のツイートを結構読ませてもらった。そこで感じたのは、マスコミが報道しているより韓国の若者にも冷静或いは好意的に日本を評価している人が多いことと、日本の若者でも自力でそれなりに歴史を勉強している者が少なくないということだった。だがもちろんそれは、ほんの一握りの人たちに過ぎない。結局今の日本では、自分から学ばなければ、真実など到底見えてこないという事である。いつの時代も、権力者達は庶民を騙すことによって自分たちの利益や目標を達成してきた。我々に必要なのは、その深意を見抜く目なのだ。

追記: 上記の内容で今月の「独り言」は〆ようと思っていたのだが、ここ数日の国会等の報道を目にするにつけ、少し蛇足を加えたくなった。  文科省が日本史を必修科目にすると決めた矢先、尖閣・竹島領土問題を教科書に記載することが発表された。教育の場で子供たちに領土について教えること自体は正当なことであり、他国に遠慮することではない。だが、どう考えても時期が悪い。現在の中・韓国と安倍政権の不仲具合からすれば、まさに火に油を注ぐことになるに決まっている。何故、今のタイミングなのだろう? 昨今の首相を見ていると、何かに急かされているかのように右傾化政策を推し進めている気がする。  安倍政権に近いと噂されたNHKの新会長が従軍慰安婦についてありえない失言をした。この件に関して国会で問われた首相は、その失言を否定も肯定もせず、放送局はいかなる圧力にも屈することなく中立を貫いてほしい由の答弁をした。ところが、かつてNHKが政府自民党の圧力で番組を改変させられた事件があった。NHKを辞めた担当のプロデューサーの証言によれば、NHK幹部に脅しをかけたのは、当時の官房副長官安倍晋三氏その人であると!  先月の「独り言」で今年は後世の歴史に残る年になるかもしれないと書いたが、政府の方向性をよくよく見極める必要を一段と感じずにはいられない今日この頃である。

 いつも以上に長く読み辛い文章に最後までお付き合い頂きまして、誠にありがとうございました。

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